ドキュメントは開発者間のコミュニケーションを円滑にし、コードの可読性とメンテナンス性を向上させる重要な役割を果たします。
Docstringは、Pythonコード内に記述されるドキュメントで、開発者が関数やクラスの目的、使い方、引数や戻り値などを理解するのに役立ちます。
最終的な成果物はソースコードなので、ソースコード内にドキュメントを記載すると、メンテナンス漏れの可能性が減り、メンテナンス性が向上します。
本記事では、Python Docstringの使い方について、サンプル付きで詳しく説明します。
これらの知識を活用して、Pythonプロジェクトにおいて効果的なドキュメント作成と維持を実現しましょう。
Pythonを勉強する時、何から勉強するか分からず、挫折します。初心者でも、中級者でも、レベルに合わせた勉強方法を分かりやすくまとめています。
Python Docstringの重要性
Docstringは非常に重要な役割を果たしています。Docstringは、コード内に直接記述されるコメントの一種で、関数やクラス、モジュールなどの説明を記載するために使用されます。
Python Docstringを利用すると、以下のメリットが受けられます。
コードの可読性向上
Docstringを使って、コードの可読性を向上させることができます。
Docstringには、関数やクラスの目的、入力引数、戻り値、例外など、コードの動作に関する情報が詳細に記載されます。これにより、他の開発者がコードを読む際に、その機能や使い方を理解しやすくなります。
例えば、以下のような関数にDocstringを追加することで、その機能が明確になります。
def add(a, b):
"""
2つの数値を受け取り、その和を返す関数。
引数:
a (float): 数値1
b (float): 数値2
戻り値:
float: aとbの和
"""
return a + b
効果的なチームコラボレーション
チームでの開発では、Docstringがコミュニケーションを助ける役割を果たします。
チームメンバーが作成したコードを理解しやすいと、効率的なコラボレーションが可能になります。
理解しやすいと、仕様的なバグの指摘もしやすくなります。
また、新しいメンバーがプロジェクトに参加した際にも、Docstringを通じてコードの理解がスムーズに進むことで、短期間でのプロジェクトへの貢献が期待できます。
維持管理のしやすさ
プロジェクトが成長し、コードが複雑になると、維持管理が難しくなります。
Docstringがあると、コードの構造や機能を追跡しやすくなり、バグの修正や機能追加が容易になります。
さらに、コードのリファクタリングが必要な場合でも、Docstringを参照することで、影響範囲を把握しやすくなります。
Python Docstringの基本構造
PythonのDocstringは、関数やクラス、モジュールの定義の直後に記述されるコメントで、トリプルクォートで囲みます。
一般的に、Docstringには以下の要素が含まれています。
- 一行目の要約
- 詳細な説明
- 引数の説明
- 戻り値の説明
- 例外の説明
以下は、PythonのDocstringに一般的な要素を含めた単純なサンプルコードです。この例では、2つの数値の和を計算する簡単な関数add_numbers
を定義しています。
def add_numbers(a, b):
"""
2つの数値の和を計算し、結果を返します。
この関数は、引数で与えられた2つの数値を加算し、その結果を返します。
数値以外の型が引数として与えられた場合、TypeErrorが発生します。
Parameters:
a (int, float): 加算される数値1
b (int, float): 加算される数値2
Returns:
float: 引数aとbの和
Raises:
TypeError: 引数が数値でない場合に発生する例外
Examples:
>>> add_numbers(1, 2)
3.0
>>> add_numbers(3.5, 2.5)
6.0
>>> add_numbers(1, '2')
Traceback (most recent call last):
...
TypeError: Both arguments must be numbers.
"""
if not (isinstance(a, (int, float)) and isinstance(b, (int, float))):
raise TypeError("Both arguments must be numbers.")
return a + b
このサンプルコードでは、一行目の要約、詳細な説明、引数の説明、戻り値の説明、例外の説明を含めてDocstringを記述しています。
このようなDocstringの記述により、他の開発者が関数の目的や使い方を理解しやすくなります。
上記のサンプルコードでは、以下のことをやっています。
add_numbers
関数の一行目の要約で、関数が2つの数値の和を計算することを説明- 詳細な説明で、関数の動作と引数の型に関する情報を提供
Parameters
セクションでは、引数a
とb
の説明と型を記載Returns
セクションでは、戻り値の型(float
)と説明(引数a
とb
の和)を提供Raises
セクションでは、関数がTypeError
例外を発生させる可能性があることを説明- 関数の使用例とその結果を示し、例外が発生する場合の例も記載
これにより、他の開発者がソースコードの仕様について、理解しやすくなります。
Docstringのスタイルガイド
Docstringにはいくつかのスタイルガイドが存在し、それぞれが異なる書式や構成を提案しています。
以下では、主要な3つのスタイルガイドを紹介し、それぞれの特徴を比較します。
以下に、Googleスタイル、NumPyスタイル、SphinxスタイルのDocstringを比較した表を示します。
内容 | Googleスタイル | NumPyスタイル | Sphinxスタイル |
---|---|---|---|
一行目の要約 | 一行目に簡潔な要約を記述 | 一行目に簡潔な要約を記述 | 一行目に簡潔な要約を記述 |
引数の説明 | Args: セクションで引数名、型、説明を記述 | Parameters セクションで引数名、型、説明を記述 | :param [型] 引数名: で引数名、型、説明を記述 |
戻り値の説明 | Returns: セクションで戻り値の型、説明を記述 | Returns セクションで戻り値の型、説明を記述 | :returns: [型] で戻り値の型、説明を記述 |
例外の説明 | Raises: セクションで例外の型、説明を記述 | Raises セクションで例外の型、説明を記述 | :raises [型]: で例外の型、説明を記述 |
セクション間隔 | セクション間に空行を入れる | セクション間に空行を入れ、Parameters などのセクション名に下線を引く | セクション間に空行を入れる |
インデント | 引数名、型、説明が同じインデントで記述される | 引数名、型、説明が同じインデントで記述される | :param: , :returns: , :raises: の後にインデントを入れる |
これらのスタイルは、それぞれ異なる形式や記法を持っていますが、同じような情報を伝えることができます。チームやプロジェクトの要件に応じて、最も適切なスタイルを選択してください。
以下にそれぞれのスタイルのサンプルを提示します。
Googleスタイル
GoogleスタイルのDocstringは、シンプルで読みやすい構成が特徴です。引数と戻り値の説明には、コロンを使用して名前と説明を区切ります。
def add(a, b):
"""
2つの数値を受け取り、その和を返す関数。
Args:
a (float): 数値1
b (float): 数値2
Returns:
float: aとbの和
"""
return a + b
NumPyスタイル
NumPyスタイルは、科学計算や数値解析の分野でよく使用されています。引数と戻り値の説明では、型と説明が別の行に記載され、見た目が整っています。
def add(a, b):
"""
2つの数値を受け取り、その和を返す関数。
Parameters
----------
a : float
数値1
b : float
数値2
Returns
-------
float
aとbの和
"""
return a + b
Sphinxスタイル
Sphinxスタイルは、Pythonプロジェクトで広く使われている自動文書生成ツールのSphinxと連携することを目的としています。
引数や戻り値の説明には、専用のタグ(:param
、:type
、:return
など)を使用します。
def add(a, b):
"""
2つの数値を受け取り、その和を返す関数。
:param a: 数値1
:type a: float
:param b: 数値2
:type b: float
:return: aとbの和
:rtype: float
"""
return a + b
自動文書生成ツールの活用
Pythonには、Docstringから自動的にドキュメントを生成するツールがいくつか存在します。これらのツールを活用することで、効率的にドキュメントを作成し、常に最新の状態に保つことができます。以下では、主要な自動文書生成ツールを紹介します。
pydoc
pydocは、Python標準ライブラリに含まれるドキュメント生成ツールで、Docstringからドキュメントを生成します。
pydocは、コマンドラインから実行でき、結果をテキスト形式やHTML形式で表示できます。また、pydocを使って、ローカルで簡易なドキュメントサーバを立ち上げることも可能です。
Sphinx
Sphinxは、Pythonプロジェクトのための強力なドキュメント生成ツールです。
Sphinxは、Docstringからドキュメントを生成し、HTML、PDF、ePubなどの形式で出力することができます。また、Sphinxは、拡張機能を追加することで、ドキュメントのスタイルや機能をカスタマイズできます。
Read the Docs
Read the Docsは、オンライン上でドキュメントをホスティングするサービスです。
Read the DocsとSphinxを連携させることで、ドキュメントの自動ビルドとデプロイが可能になります。また、Read the Docsでは、バージョン管理もサポートされており、異なるバージョンのドキュメントを簡単に管理できます。
Docstringのベストプラクティス
効果的なDocstringを作成するためには、いくつかのベストプラクティスに従うことが望ましいです。
一貫性のある書式を維持
ドキュメントの品質を向上させるためには、一貫性のある書式を維持することが重要です。
ある関数では、Googleスタイル、その他では、Sphinxスタイルと言った使い方は非推奨です。
前述のスタイルガイドを参考にし、プロジェクト全体で同じスタイルを適用しましょう。
コード変更時のDocstringの更新
コードが変更された場合、それに伴ってDocstringも更新することが重要です。
古い情報が含まれるDocstringは、開発者の混乱を引き起こす可能性があります。コードと同時にDocstringも更新する習慣を身につけましょう。
テストとしてのDocstringの活用
Docstringには、関数やメソッドの使用例を示すことができます。
これらの例を用いて、ドキュメントをテストとして活用することができます。Pythonのdoctest
モジュールを利用することで、Docstring内のコード例を自動的にテストすることができます。
プロジェクトにおけるDocstringの管理
プロジェクト全体でDocstringの品質を維持するためには、いくつかの管理手法が役立ちます。
チームでの統一されたスタイルの選択
プロジェクトの初期段階で、チームで統一されたスタイルを選択しましょう。これにより、開発者間でのコミュニケーションが円滑になり、コードの可読性が向上します。
レビュープロセスでのDocstringのチェック
コードレビューのプロセスにおいて、Docstringも適切に記述されているかを確認しましょう。これにより、ドキュメントの品質を維持することができます。
ドキュメントの継続的な改善
ドキュメントは、プロジェクトが進むにつれて継続的に改善されるべきです。新たな機能や変更点が追加された際には、適宜ドキュメントを更新しましょう。
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まとめ:Python Docstringを効果的に活用するために
本記事では、PythonのDocstringの重要性や活用方法について、詳しく解説しました。
Docstringは、コードの可読性を向上させ、効果的なチームコラボレーションを実現するために重要な要素です。
記事では、Docstringの基本構造、主要なスタイルガイド、自動文書生成ツールの活用方法、ベストプラクティス、およびプロジェクトにおけるDocstringの管理方法について説明しました。
これらの知識を活用して、効果的なドキュメント作成と維持を実現しましょう。適切に記述されたDocstringは、コードの可読性とメンテナンス性を向上させ、チーム全体の生産性を高めることに繋がります。
今後もPython Docstringを活用し、プロジェクトの成功に貢献していきましょう。
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